ふとんのふうちゃん

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Takecha

竹内の作った童話です。ぜひ読んでください。

 ふうちゃんはわたあめみたいにふっくらした小さなしろいくもです。

 「きもちがいいなあ。」

ふうちゃんがふわふわうかんでいるとかみさまがやってきました。

 「ふうちゃん、いよいよ生まれるときがきたよ。」

 「わたしはどこに行けばいいの?。」ふうちゃんはかみさまにたずねました。

 「人間のすんでいるまちへいってらっしゃい。」

 かみさまが持っていたつえをすいっとふるとふうちゃんはふわふわと下の方へおりていきます。

 「ここがかみさまのいっていた人間のいるまちなんだ。」ふうちゃんははじめてみる家や川やのはらの上をゆっくりと進んでいきました。

 「私はどこまでいくんだろう。」ふうちゃんはちょっとしんぱいになりました。

 やがて小さな家が見えてきました。ふうちゃんはふわふわと家の中へ入っていきます。中ではおばあちゃんが小さなふとんを作っていました。

 「さあ、あかちゃんのふとんができたよ。生まれるのにまにあってよかったよ。」おばあちゃんはこしをのばしながらほっとしていいました。

 小さなふとんがかわいいあかちゃんのものだとわかってふうちゃんはうれしくなりました。

「ふふふ。」とわらったそのとき、

「あかちゃんのふとんになりなさい。」というかみさまの声がきこえました。

 ふうちゃんはちいさなふとんにすーっときえるようにすいこまれていきました。

 「おんぎゃあ、おんぎゃあ」ふうちゃんにはうまれたばかりの元気なかわいいおとこのあかちゃんがねかされました。

「かわいいあかちゃんだなあ。」あかちゃんのぽちゃぽちゃした顔がふうちゃんにさわるたびにふうちゃんはうれしくなりました。

元気なあかちゃんはゆうくんといいます。あったかくてふかふかのふうちゃんにくるまれてすくすくと大きくなりました。

 ゆうくんはまだちっちゃいのでおもらしをよくしました。そのたびにふうちゃんはかおをしかめましたがそのことはだれもしりません。

 ゆうくんが五才のとき、おうちに小犬がもらわれてきました。ゆうくんはころというなまえをつけてかわいがっていましたが、夜になるところはおかあさんにあいたくて「くーん、くーん。」となきました。

 やさしいゆうくんはおかあさんにいいました。

 「おかあさん、ぼくのふとんをころにあげようよ。」

 「ゆうくんはこのふとんでないとねれないんじゃなかったの。」

 「ぼくだって大きくなったからそのふとんでなくてもだいじょうぶだよ。だってころがさみしそうなんだもん。」

 ころはふうちゃんが大好きになりました。ふうちゃんにくるまれているとあたたかくてとっても安心です。

 少し大きくなったころはふうちゃんに体をこすりつけたり、かみついたり、なめるのがとくいになりました。

 ふうちゃんはころのふとんでいるのがいやでいやでたまりません。

 「ころちゃんはかわいいけど、わたしにかみついたりひきずったりするんだよね。おねしょもよくするからまいっちゃう。」ふうちゃんはおもいました。

 「わたしだってたまにはゆっくりしていたいときだってあるのに、おはなしができないからころちゃんにもんくもいえやしない。つぎは人間に生まれてきたいな。」

 ふうちゃんは人間にあこがれていました。ゆうくんはころをさんぽにつれていってくれるのでそのときだけふうちゃんはゆっくり休むことができます。

 それにふうちゃんにかみついたりいじわるをするころに、

 「ふとんにわるさをするのはいけないんだよ。めっ!」といっておこってくれます。

 「人間てえらいんだなあ。ふうちゃんもつぎに生まれてくるときにはかみさまにおねがいして人間にしてほしいなあ。」

 ふうちゃんはこんなふうに思いながらころとすごしていました。そしてふうちゃんは毎日かみさまにおねがいしました。

 そんなある日、

 「ふうちゃんは人間になりたいんだね。ころのおかあさんのかわりになってやさしくしてくれたごほうびに人間にしてあげよう。」

 どこからともなくふしぎな声が聞こえてきました。その声といっしょにふうちゃんはとても遠いしらない世界へすいこまれていきました。そしてなにもわからなくなりました。

 「あれえ、ここはどこだ。」

 ころちゃんのふとんになる前はまいにち見ていたお家の中にふうちゃんはいました。

 ふうちゃんを小さな男の子がのぞきこんでいるのがうすぼんやりと見えています。

 「おかしいなあ。ころちゃんとなかよしだったゆうくんだよ。かみさまはわたしを人間にしてくれるといってくれたのにやっぱりだめだったのかなあ。」と思いました。

 そのとき、それまで見えていたものがぐらんぐらんとゆれて、ゆうくんのおかあさんの顔がちかづいてきました。

 「かずちゃん、おっぱいの時間だよ。たくさんのんで大きくなるんだよ。」

 おかあさんのおっぱいをふうちゃんはぱくりとくわえて、ごくごくとのみました。

 「かみさまはやくそくどおりわたしを人間にしてくれたんだ。ありがとう。」

 おなかがふくれるまでおっぱいをのむとふうちゃんはあんしんしてねむくなってきました。

 うつらうつらしているとゆうくんがこもりうたをうたってくれました。

 「ねんねんころりよ、おこもりよ。かずちゃんはおりこだ、ねんねしな。」

 ゆうくんにとんとんとやさしくたたいてもらっているうちにかずちゃんはいいきもちになってすやすやとねてしまいました。

 かずちゃんはやさしいおかあさんとゆうくんにかこまれてすくすくとそだちました。

 大きくなるにしたがってじぶんがふとんのふうちゃんだったときのことはすこしずつわすれてしまいました。

 今は人間のかわいらしい女の子のかずちゃんです。

 「かずちゃん、早くおきなさい。ほいくえんにおくれるよ。」

 「もうちょっとだけねかせて。おかあさん、おねがい。」

 「いつまでねているの。いいかげんにしなさい。」

かずちゃんは朝がきらいです。

 「かずちゃん、朝だよー。」とおひさまにさそわれてもおきられません。めにのりがついているみたいにひらきません。そのたびにおかあさんにおこられてしまいます。

 「どうして朝になるとおきなきゃいけないのかな。一日ずっとねていられたららくチンなのにな。」

 おかあさんにおこられるたびにかずちゃんは思いました。

 「ふとんになりたいなあ。あたたかくて一日ゆっくりしていられるもの。つぎに生まれてくるときにはわたしはふとんがいいなあ。」かずちゃんは毎日かんがえていました。

 「かみさま、こんど生まれてくるときにはふとんにしてください。できるだけふかふかのふとんをお願いします。」

 かずちゃんがかみさまにおいりしているとおにいちゃんのゆうくんがいいました

 「かずちゃん、ふとんだってすぐにいいふとんになれるわけじゃないと思うよ。」

 ゆうくんはちょっといばってせつめいします。

「さいしょはきっとおねしょをたくさんするこどものふとんだったり、犬のもうふになるんじゃないかな。それからがんばってやっとおとなのふかふかふとんになれるんだ。」

「そんなことないよ。かずみたいなおりこうさんは、すぐに人間のふかふかふとんになれるとおもうんだ。」

 ゆうくんとそんな話しをしながらかずちゃんはころとさんぽにいこうしてとおにわにでました。

 かずちゃんはころをさんぽにつれていくつながみつからなくてものおきをさがしていました。

 ものおきのすみのにはつかいふるしてぼろぼろになった小さなふとんがつんでありました。

 そのふとんを見たとたんかずちゃんは、

 「あっ!。」

 と声をあげてしまいました。

 どうして声がでてしまったのかかずちゃんにはわかりません。でもとてもなつかしいきもちになりました。

 そのとき、

「ふうちゃん、げんきですか。」

 どこからともなくこえがきこえます。かずちゃんはふりかえってあたりをみまわしましたがだれもいません。

 「そうか。わたしは人間になりたくてしかたがなかったんだ。」

 かずちゃんはようやくおもいだしました。

 つぎの日、かずちゃんは朝ぱちっと目がさめました。ふとんからとびおきると「おはよう。」とおかあさんにいいました。

 「おやおや、おねぼうさんがはやおきになったのね。」おかあさんもびっくりです。もう「ふとんになりたい。」なんておもいません。

 かずちゃんは「いってきます。」というとげんきよくほいくえんにむかってかけだしていきました。

     (ふとんのふうちゃん終わり)